所得税法では、金銭以外の経済的利益についても収入金額に算入することとしている。例えば、従業員が会社から現物支給を受けた場合は、原則、その時価を給与等の収入金額に算入することになるが、金額が少額な場合には課税しなくてもよいものもある。そのひとつに、創業記念、増資記念、工事完成記念、合併記念などに際し、その記念として支給する記念品(「創業記念品等」)がある。
具体的には、(1)その支給額が社会通念上記念品としてふさわしいものであり、かつ、そのものの価額(処分見込価額により評価した価額)が1万円以下のものであること、(2)創業記念のように一定期間ごと到来する記念に際し支給する記念品については、創業後相当な期間(おおむね5年以上の期間)ごとに支給するものであること、という要件のいずれにも該当すれば、課税しなくてもよいこととされている。
ただし、この取扱いを受けるのは記念品に係る経済的利益に限られるため、記念品に代えて支給する金銭については、給与等として課税の対象となる。同様に、「商品券」などの金券を記念品として支給された場合も、市場への売却性、換金性があり、ほとんど金銭での支給と変わらないことから、現物給与として課税されることになる。また、最近は、カタログギフトを贈り、そこに掲載された商品を記念品として支給するケースがみられる。
記念品を自由に選択できるとなると、会社から支給された金銭でその品物を購入した場合と同様の効果をもたらすものと考えられるから、その品物の価格は現物給与として課税することになり、非課税として取り扱っている創業記念品等には該当しないことになる。こうしたケースでは、記念品の金額の多寡にかかわらず、その品物の価格が給与等として課税されることになる。
創業記念品等については、その支給が社会一般的に行われているものであり、また、その記念品は、通常、(1)市場への売却性、換金性がなく、(2)選択性も乏しく、(3)その金額も多額となるものでないことなどから、強いて課税しないこととされている。このため、「金銭」での支給はもちろんのこと、「商品券」や自由に選択できる「カタログギフト」などでの支給は給与等として課税されるので注意したい。